○月×日

風邪はまぁよくなった。やっぱビール飲んだのが利いたんだと思う。
病気で弱ってたらなんだかんだ言ってみんなが看病してくれて、
なかでも翔太が意外と慈悲深くて、職場でもらってきた桃なんかむいてくれたり
あと秘伝のスタミナスープみたいなの魔法瓶に持ってきてくれた。
人を見た目で判断しちゃ、ダメ、絶対。
カズマには「ウイルスと名のつくものに近づきたくない」と
ずばっと言い切られて普段の2.5倍くらい他人行儀にされた。
一番驚いたのは理一だ。
やっと風邪がよくなってきたってのに、「これ以上免疫がないものに悪さをされちゃ大変だ」と、
職権乱用で防護服を持ってきて、無理やり着せられた。病み上がりが一番危険、だそうだ。
別にいいけど、
これ暑い。


○月×日

たこ焼きを買ってみた。
計6個のたこ焼きを三人で食べるということは、
一人につき2個づつ配分される…という計算を
俺は瞬時に算出した。
まず健二くんが若干無理やりひとくちで
食べたのでやけどした。
「あっでもなんか、これタコが二つが入ってる!」
ということだったので、俺も期待して一投目にかかったわけだがどうだ、 俺のにはタコがふたつ入ってるどころか、
これタコ入ってねぇ……。
「もしかしてソレも二つ入ってました?」と健二君が
嬉しそうに聞くので、なんとなく「あぁ、うん」と言ってしまった。
カズマが食べたのにも「あ、これもラッキー」とどうやら二つタコさんのにあたったらしい。
まったく運のいい子供達だな。
つーか、俺はたこ焼きにこんなロシアンルーレットみたいな要素、期待してねぇ。
その後もこいつらは普通にタコが入った正統派のたこ焼きにあたったわけだ。
「ごちそうさまでした侘助さん!」
俺は残りのひとつをどきどきしながら口に入れました。
まぁ、結果から言うとあれだ。いくら噛んでもタコさん的な手ごたえは感じられませんでした。
まったく日本は最悪だな。


○月×日

太助さんと理一と、ぐだぐだビールだの日本酒だの
飲んでいたら、理一と太助さんの会話に火がついて
俺はちょっとついていけなくなった。
「なるほどね!そこで縄を二重にして縛り上げるんだよね!」
「手錠をつかうのも面白いよ!」
「ガムテープでぐるぐる巻きにして這って歩かせるのもいいよね!」
「写真撮っておけば色々使えるよね!」
と二人とも人格変わったみたいにすごい早口ですごい楽しそうだが、なんの話だかぜんぜん意味がわからねぇ。
そのまま飲み明かして、部屋中に缶だの酒瓶だの散らかして寝てたら
翔太が乗り込んできた。
「げっっ酒くさっ」と自分の父親を蹴りとばしながら
「アルミ缶とスチール缶の分別もしねぇで散らかしやがって…!くそ、これ燃えるゴミじゃねぇか、くそっ」と
文句言いながら着実にゴミを片付け始めた。
あいつはいい嫁になる。

○月×日

佳主馬に子供らしい映画でも見せてやろうと思い、千と千尋の○隠しと、
紅の○と、どっちにしようか迷ったが、紅の○のほうを借りてきて観た。
最初はだらだらと「ジーナかわいい〜」とか喋りながら観ていたけど
中盤からは3人とも真顔で鑑賞してしまった。
「あ〜終わった終わった腰いてー」と電気つけようとしたら、
佳主馬が俺の袖をひっぱって「ちょっと待って…まだつけないで」と言うので
何事かと思ったら、
「なんで…あの人、豚なの?」
と俺に真剣なまなざしを向けてきた。
え…?あの人ってポルコのこと?何で今更そんなこと言ってるのこの子は…と思ったので
「お前ナンセンスなこと聞くなって…そこ分かんないんじゃ感動半減だろ」と
鼻で笑ってやった。
その直後急いで理一に、「ねぇ、ほんとにアレなんで豚になっちゃったの?」とこっそり尋ねてみた。
理一は「え?豚だったっけ?」と問題外の反応をみせた。
お前ぜったい戦闘機しか観てなかっただろ!!
佳主馬は一人でうーん…と眉間にシワを寄せて何やら考えていた。
まだ中学生なのに、そんなにシワ寄せちゃすぐ年寄りになっちゃうぜ、と心配になったので
俺は「豚の話はもうやめよう」と言った。


○月×日

「今日は天気がいいので外で元気に子供と遊ぼう!」
と朝っぱらから理一に3回くらい枕元で連呼された。
本当に煩わしくて、寝たフリしてたけど、無理やり外に引きずりだされた。
「ったく、まだパジャマのまんまかよ!こっちは既にラジオ体操第二 まで済ませたぜ!」と
翔太がいつになく清々しく庭にスタンバイしていた。
太助も「え〜鬼ごっことかだったらバリア〜!とかしていいの?いいの?あれ、古い?」と、
またテンション高かった。
「さぁおじさんたちと、いい事して遊ぼう!!」
と子供達を庭に誘い出し、「なんでもいいよ!怪獣ごっこでもするか!」と
大人たちだけ盛り上がっていた。怪獣ごっこって何?
「ほら慎吾、何して遊びたい?色オニ?かくれんぼでもする?」と太助が聞くと、
慎吾はウーン…とため息をついて「楽なのがいい」と言い放った。
気を取り直して、祐平にドッジボールでもするか?と聞くと、「疲れる」といわれた。
そして真央からは「忙しい」という意見が出た。
そのあとは、大人4人で元気に相撲をして遊んだ。